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Tea Information From 日本茶BANK

2024.06.25 Update

栄西禅師顕彰茶会を終えて

清々しい空の下、執り行われた顕彰茶会

令和6年6月2日(日)、佐賀県神埼郡吉野ヶ里町松隈の修学院さん(背振山下宮積翠教寺)で、「第一回背振山栄西茶顕彰茶会」が開催されました。

その日は背振山からの恩恵を頂き、清々しいお茶会日和。
日中は汗ばむほどの陽気でしたが、まだ過ごしやすく、梅雨に入る前の良いタイミング。

初回のお茶会は大盛況!想定100席の予定でしたが、当日券が売れに売れ、200席まで増えました。普段静かな山里が賑やかさを放った一日でした。

茶の祖、栄西禅師への想いを心ひとつに

この茶会は、「裏千家、志村宗恭先生」をはじめ、茶道の先生方を中心に集まったメンバーの福岡事務局と現地背振側で茶会の環境調整を行なってくれた元町長の多良正裕さんを中心とする「松隈地域づくり株式会社」、この二つが 〜佐賀と福岡「茶の祖、栄西禅師への想いを心ひとつに」〜というスローガンを掲げ、開催致しました。

会場となった修学院さんは天台宗 。
804年、最澄上人も背振山に入山したことで知られる由緒正しいお寺です。

修学院本堂前

それから300年以上後に、栄西禅師が宋から茶の種を持ち帰り、臨済宗と共に茶を普及させます。その茶種を背振山の山中の「石上坊」の前庭に蒔いたのが、今に続く茶園の始まりと言われております。

我が日本国には先人たちが培ってきた長い歴史があり、その重みを認識し、地域を守り、未来に向けて地域を活かしていく事が必要な時代になっています。
この茶会の目的は「栄西茶の継続」、そのひと言に尽きます 栄西茶の生産は既に衰退を極めており、残る生産者はわずか5世帯程度で、そのどこにも後継者はいません。

そこで、このような栄西茶会を年に一度開催し、この現状を多くの方に知って頂くとともに、「栄西茶」を購入頂くことでダイレクトな収入を生産者が受け取り、翌年からの茶園の維持管理の人件費などに使ってもらうなど、今後の生産継続のきかっけとしてもらいます。
実際、今回、栄西茶の新茶を販売したところ、準備したお茶は12時過ぎには完売し、多良さん宅に確保している在庫も残り少なくなっています。

本堂前で行われた献茶式の様子


今回、栄西茶販売に関して大分県の「若竹園」の牧社長様には当初からのご協力を賜り、この茶会開催経費の協賛にも多大なご尽力を頂いた事に深く感謝致します。多くの方々のお力添えのお陰でこの茶会が開催できました。


『始まりの茶、栄西茶』を後世に繋げていくために

全国的に衰退している日本の茶産地の継続には、いろんな方法があると思います。
この産地は鹿児島や静岡の様な大型経営的な茶産地に戻ることは難しいですが、「始まりの茶、栄西茶」として観光に特化した茶園経営へのシフトを図り、地域活性化事業の一環とした生産経営にチャレンジしていきます。

今回の茶会、せっかくお越し頂くお客様にもっと栄西茶を知って頂きたいという事で、屋外に、背振山山中にある石上坊や霊仙寺址、日本茶園の発祥の地の碑などの画像を展示し、その茶園の様子を多良さんからお話し頂きました。それに皆さん興味深々!今度はそこにも行きたい!というお声を多く頂いております。


修学院さんの屋内で開催した茶席は、抹茶席一席と煎茶席一席の計2席セット
お抹茶席は、我が師範、裏千家「志村宗恭」先生と他流派の先生の2名体制。

志村宗恭先生のお抹茶席の様子

お煎茶席は、佐賀県出身の有名文化人「売茶翁」の直系のご子孫であられます高遊外売茶流宗家「柴山高緑」先生と日本礼道小笠原流佐賀支部長「諸井宗景」先生のお二人、つまり日本のお煎茶道界のスーパースターが揃い踏みでお出迎え。

しかも、お煎茶席のお茶は今年の栄西茶の新茶を使って頂きました。両先生方は、事前に何度も美味しい栄西茶の煎れ方を研究して下さり・・・。
いつもの茶葉ではないので、ジャストの味わいを導き出すのは大変だったと思います。
ご多忙中、何度もチャレンジして頂いたことに併せて感謝申し上げます。

当日は、佐賀や福岡から各メディアの取材も多く入り、翌日の朝刊にはこんな記事も・・・。

来賓の方々は地元の議員さんを始め、福岡県知事服部夫人、東京から大妻女子大学名誉教授でお茶大学学長の大森正司先生、佐賀県茶業試験場長、在福岡中国領事館から領事代行など、多くの方にお越し頂きました。

篠笛の美しい音色が響き渡る献茶式

今回のメインイベントである献茶式では、献笛も行われました。

京都の上賀茂神社や奈良、阿蘇など、全国各地の神社仏閣で篠笛を献上されています「博多さくら会」代表の佐渡睦さんが以下の曲順で献上下さいました。

①旭あさひ(背振山にご挨拶)

②奉納曲「雪の静音」(本殿に)

③「時織TOKIORI〜季節を重ね時を織る〜」

④「奥の水鏡」祐徳稲荷神社奉納曲 (鍋島家にゆかりある修学院 さんにちなんで)

背振の空に鳴り響く篠笛の音色は、風に乗って山々に染み入る様に流れていき、献茶式に彩りを添えられました。

おわりに

今回の茶会は半年前から事務局と現地とで打合せを始めました。皆、仕事を抱えていますので、夜に集まり時には0時を回るほど・・・。
でも当日、茶会に来て頂いたお客様の笑顔や励ましのお言葉を頂いて、苦労も吹き飛びすっかり元気がみなぎっています。

これからも栄西禅師顕彰茶会は続けて参ります。さらに良い茶会にして、皆様に年に一度の楽しみにして頂けるとこんなに嬉しい事はありません。

それが、この地域の栄西茶を残していくことに繋がりますから・・・。 

多くの方が同じ思いで参加下さった事に深く感謝申し上げます。来年も楽しみに待っていて下さいね。