今回は、那覇の一部地域に伝わるお茶「ブクブクー茶」をご紹介したいと思います。
まずは、下の画像をご覧ください。
画像右側の、茶碗に入ったかき氷のようにも見えるものが「ブクブクー茶」です。
なんて特徴的な見た目!!その名の通り「ブクブク」としています。
ブクブクー茶は、旧那覇市の時代に那覇四町(なはゆまち)と呼ばれていた、東村・西村・若狭町村・泉崎村で飲まれた、豊かな泡を楽しむお茶で、夏の飲み物とされています。
沖縄は古くから東シナ海交易の中継地として栄え、中国(特に福建省)や台湾などと交流を持ってきました。沖縄にお茶の文化が定着したのは、これらの国と古くから貿易を行ってきたことが関係していると考えられています。
「ブクブクー茶」の起源は定かではなく琉球王朝(1429-1879)で飲まれていたという説もありますし、江戸時代中期(1681-1780)、那覇の役人の家庭の婦人たちが、茶道に代わる楽しみとしてブクブク茶を考案したとも言われています。
いずれにせよ、江戸時代以降、那覇四町の町人の間で生活文化として伝承され、明治・大正・昭和初期には旅立ちや祝いの席などで飲まれる、庶民の飲み物として親しまれてきました。
生活様式の変化や、第二次世界大戦などの戦争で道具類が消失したことにより、戦後50年近く「ブクブクー茶」は途絶えてしまいます。
しかし、1992年に「沖縄伝統ブクブクー茶保存会」が発足。保存会が唯一残されていた道具をもとに研究を重ね、復元に成功!その伝統が現代に継承されています。
直径25cm・深さ13cmほどの大きな木鉢(ブクブクー皿)と、長さ25cm・口径5cmほどの大きな茶せん、人数分の茶碗を用意します。
お米をこげ茶色になるまで煎り(現在は焼く)、ミネラル分の多い硬水で20分くらい煮出し、その液をこします。これを煎り米湯といいます。
煎り米湯にさんぴん茶を混ぜて、ブクブクー皿木に入れます。
大きな茶せんで10分くらい泡立てます(正座して右膝を立て、そこへ右肘を添えて茶せんを振るのが泡立ちをよくするスタイルといわれており、このスタイルで使いやすいように、大きな茶せんが使用されてきたのだとか)。
クリーミーで、しっかりした泡が出来れば泡立て完了です(煎り米湯が粘りを出し、さんぴん茶が泡を膨らませます)。
各茶碗に少量の赤飯を入れておきます。
赤飯が浸る程度に煎り米湯を注ぎ、その上に茶せんですくいあげた泡を入れます。
泡の上には、砕いた落花生をふりかけます。
「ブクブクー茶」はスプーンなどの道具は使わずに、茶碗を両手で持ち泡の上の方から泡を噛むように飲み始めます。泡には味はなく、お茶の香りがします。ちんすこうなどの菓子を食べてから飲むと泡に甘みを感じます。
「ブクブクー茶」にも使われている「さんぴん茶」について、少しご紹介しておきます。
さんぴん茶は、ジャスミンのさわやかな香りがする、沖縄特有のお茶です。台湾からジャスミン茶を輸入した際の呼び名が「香片(シャンピエン)」だったことから、「さんぴん」と呼ばれるようになったといわれています。
ジャスミンの香りが付けられているという意味では、「さんぴん茶」と「ジャスミン茶」はとてもよく似ていますが、同じものではありません。
一般的に「ジャスミン茶」とは、不発酵茶である「釜炒り製緑茶」にジャスミンの香りを付けたもののことを言います(日本で主流の緑色の緑茶ではなく、中国で主流の釜炒りして作られる緑茶が使われている)。
「ジャスミン茶」に不発酵茶が使われているのに対し、「さんぴん茶」には半発酵茶(ウーロン茶など)にジャスミンの香りを付けています。
この夏、沖縄旅行を予定されている方は、是非、現地で「ブクブクー茶」や「さんぴん茶」を飲んでみてください。沖縄の夏にピッタリの、爽やかでスッキリした味わいです。
また、お茶のお供は、ちんすこうやサーターアンダーギーなど、沖縄の伝統菓子がおススメです。
参考資料:松下智「日本名茶紀行」、一般社団法人 琉球料理保存協会HP