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Tea Information From 日本茶BANK

2023.12.04 Update

日本茶AWARD2023と村上茶

「日本茶AWARD」とは?

みなさん、「日本茶AWARD」をご存知ですか?

“ 新たな時代に適応した価値あるお茶の発掘と創造を通じ、日本茶の持つ幅広い魅力を世界に伝えること ”

を目的として、2014年から毎年行われている新しいお茶の品評会です。

「多種多様なお茶の美味しさや香り」を伝えるだけでなく、
「お茶を味わう」「お茶を淹れる」といった文化も含めて、
日本茶の多様性とその幅広い魅力を、国内外に発信しています。

主催は、「NPO法人 日本茶インストラクター協会」で、
農林水産省の他、(公社)日本茶業中央会や、全国茶生産団体連合会全国茶商工業協同組合連合会、日本茶輸出組合、静岡・京都・鹿児島の茶業会議所等、日本茶の生産や販売に関わる多くの組織が、後援として名を連ねています。

「日本茶AWARD」の面白さ

「日本茶AWARD」の大きな特徴は、

1、最終審査を行うのは一般消費者
2、消費者が求める「うまいお茶」に重点を置いた審査を行う
3、茶種による部門分けがない。出品茶全ての中から大賞に選ばれるのは1点のみ

この3点。

例えば、1947年から開催されている歴史あるお茶の品評会「全国茶品評会」などの、従来の品評会では、一般消費者が審査に加わることはありません。

また、従来の品評会の審査には必ず、茶葉の色や形状といった「茶葉の外観」に関する項目が入っていますが、「日本茶AWARD」にこの項目はありません。
外観は不問。「美味しいこと」が重要。

また、通常、茶の品評会は、「普通煎茶」「深蒸し茶」「かぶせ茶」「玉露」「てん茶」など、茶種によって複数部門に分けられていて、各部門ごとに受賞者が選出されます。

一方、「日本茶AWARD」には部門分けがない!
茶葉か?日本茶飲料か?という区分けはありますが、煎茶も玉露も抹茶も、紅茶も烏龍茶も、フレーバーティーもティーバックのお茶も、「美味しさ」という同じ土俵で戦います。

茶種の垣根を超えて、「もっとも美味しい」と評価されたお茶が大賞に選ばれます。
異種格闘技戦のような面白さがありますね。

2023年の受賞茶

今年の上位入賞は下記のお茶たち(「日本茶AWARD」HPより抜粋)。
詳細は、「日本茶AWARD」の公式HPで確認してみてください。

引用元:「日本茶AWARD」HP

今年新設!「日本茶飲料部門」

「日本茶AWARD」では、今年から「日本茶飲料部門」が新設されました。
日本茶飲料とはつまり、ペットボトルや缶のお茶のこと。

記念すべき、第1回目の優秀賞に選ばれたのは、おなじみ、キリンビバレッジ株式会社さんの、「キリン 生茶 リッチ」。

奨励賞は、
静岡県藤枝市の丸七製茶株式会社さんの、「Mt.FUJI 富士香駿」。
神奈川県足柄上郡の株式会社神奈川県農協茶業センターさんの、「足柄茶リシール缶ほうじ茶」。
新潟県村上市の冨士美園株式会社さんの、「雪国緑茶(村上茶)」。

新潟県の村上茶

「日本茶AWARD2023 日本茶飲料部門」の奨励賞3点のうち、今回ピックアップするのは、新潟県村上市の冨士美園株式会社さんの、「雪国緑茶(村上茶)」です。

静岡茶や足柄茶という名前を聞いたコトはあっても、「村上茶」という名前は初めて聞いた!という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

新潟県村上市は、新潟県の最北部、山形との県境にあります。
2008 年、旧村上市、旧 岩船郡(いわふねぐん)荒川町(あらかわまち)・ 神林村(かみはやしむら)・ 朝日村(あさひむら)及 び山北町(さんぽくまち)の5市町村市が合併し、村上市が誕生しました。

そう!
世界初の鮭の自然ふ化増殖に成功したことで有名な、また、名勝天然記念物に指定されている「笹川流れ(ささがわながれ)」のある、あの村上市です。

村上市では江戸時代初期からお茶がつくられており、地域住民の生活にも「村上茶」が根付いています(商業的な茶の産地としては、全国で最も北に位置するといわれています)。

公益社団法人村上法人会HPより引用

村上茶の歴史

1620年代(江戸時代初期)、村上藩の大年寄りであった徳光屋覚左衛門(とくみつや かくざえもん)が宇治伊勢から茶の実を買い、主要地場産業にしようとしたのが始まりといわれています(当時の藩主、堀丹後守直竒(ほりたんごのかみなおより)が宇治から取り寄せたという説もあり)。

「村上茶」には、なんと!400年以上の歴史があるのです。

明治時代には、村上近郊で栽培された緑茶や紅茶が、米ニューヨークや露ウラジオストクにも輸出されていたのだとか!

明治時代から大正時代は「村上茶の黄金時代」と言われており、最盛期には650haもの茶畑がありました。

しかし、大正時代から昭和時代にかけて、他産地のお茶同様、需要の減少や地域の過疎高齢化等、時代の影響を受けて、次第に茶畑の面積も、生産者数も縮小していきました。

平成や令和になってからも、縮小は止まらず、今や茶畑面積は20haほど。
最盛期の30分の1(最盛期を100とすると3%・・・)になってしまいました。

北限の村上茶
一般社団法人 村上市観光協会HPより引用

村上茶を守るための様々な取り組み

廃業する生産者増え、生産者数は減少していますが、村上茶生産者(村上茶業組合)や県や市、地域が、手をこまねいている訳ではありません。

国土交通省の補助金(建設業と地域の元気回復助成事業)を使用し、「村上元気回復・茶レンジ事業~伝統産業『村上茶』再生による地域産業の活性化」事業を行ったり(2010年度)、

自治体の協力の元、村上茶振興対策事業を行ったり(2021年度)、

地域行事(村上三大祭り(村上大祭・岩船大祭・瀬波大祭)城下町村上町屋の人形さま巡り城下町村上町屋の屏風まつり など)や、自治体や観光協会等の地域団体が主催するイベントと連携したり、

長岡大学新潟食料農業大学などの教育機関と連携したり、

村上茶を守るため、様々な場面で、多種多様な取り組みが行われています。

村上に住む人々の、伝統を重んじ守ろうとする心、開放的で柔軟な風土こそが、村上茶を持続させるための最大のカギであり、村上茶やこの地域の財産なのかもしれません。

冨士美園さんのストーリー

さて、日本茶AWARD2023日本茶飲料部門入賞茶、冨士美園株式会社さん(新潟県村上市)の、「雪国緑茶(村上茶)」の話に戻します。

製造者の冨士美園さんの創業は明治元年(1868年)。
村上茶の老舗ですが、一時は廃業の危機にあったそう。

一般社団法人 村上市観光協会HPより引用

現在の代表者である飯島剛志さんは、冨士美園の6代目。

剛志さんの代になってから、2004年には「雪国紅茶」を、2006年には村上茶ペットボトルを、2017年には高級ボトリングティーを、2018年に雪国烏龍を・・・等々、時代に合わせたお茶を次々と商品化。新しいファン層をどんどん開拓されています。

また、6代目の改革は、商品開発だけでなく、生産面にも。
2013年には茶摘みを一部機械化、2015年には同業社と合同で、製茶の一時加工場を作られたそう。

また冨士美園の店舗奥を一部改装し、村上茶をゆっくり楽しめる喫茶スペース「茶寮カネエイ」もオープンされました。

お茶需要と取引価格の低下、生産者の高齢化と後継者不足・・・
時代流れの波に抗うことができず、大きな問題を抱える茶園が多い中、
意欲的な姿勢、柔軟な発想、発想を実現する行動力とバイタリティ・・・
どれをとってもスゴイです。

※冨士美園さんのストーリーについて、詳細はこちらのサイトをご覧ください。

冨士美園さんの雪国緑茶

前述してきた通り、村上は小規模生産地です。
生産者数も少なく、雪や寒さのハンデもあります。

そんな中、村上茶が「日本茶AWARD2023日本茶飲料部門」の奨励賞に選ばれた!

これは、飲んでみるしかありませんね!

パッケージは、明治期の輸出用ラベルをリメイクしたものだそう。
捨てるのが惜しくなるくらいカワイイ!

「雪国緑茶」は、冨士美園さんの公式ネットショップで購入できる他、新潟県内の一部の道の駅でも購入することができます。

参考資料:
・日本茶AWARD HP → https://nihoncha-award.jp/
・一般社団法人 村上市観光協会 HP → https://www.sake3.com/
・北限の茶、村上茶の現状とその魅力について(長岡大学准教授 山川智子) https://teabank.jp/assets/library/b4106e105bee564541390707c3f0491e.pdf
・冨士美園株式会社 HP → https://www.fujimien.jp/
・Things(新潟のウェブマガジン)HP → https://things-niigata.jp/