九州の中でも大分県は、“福岡の八女茶”や、“鹿児島の知覧茶”に代表されるような大きな地域銘柄はありませんが、県内全体で小規模でバラエティに富んだ茶園が多くあります。
煎茶なら、「きつき茶」「耶馬溪茶」「豊後大野茶」。
釜炒り製玉緑茶なら、「因尾茶」と、通称「吉四六茶(きっちょむちゃ)」。
その中で、オーガニックといえばここ。臼杵の吉四六茶です。
臼杵市は市全体で、お茶だけでなく全ての作物にオーガニックを推奨しています。
その臼杵市にある、髙橋製茶さんは、大分県第一号の有機JAS認証取得者です。
全国でも、県で一番早く有機JAS認証を取得した生産物が「お茶」という県は、大分県だけです(害虫や病気に茶葉がやられやすく、お茶の“旨味”は肥料によることが大きいため、農薬や化学肥料に頼らず栽培することはできない、と長らく考えられてきたため、他の農作物に比べ、有機無農薬(または低農薬)栽培の普及がなかなか進みませんでした。だからこそ、県で一番早く有機JAS認証を取得した生産物が「お茶」というのは、すごいことなのです!)。
30年以上前、現在のようにオーガニック志向が広まっていなかった先代の時代から、食の安心・安全を最優先に位置づけ、20年以上前(2001年)には有機JAS認証を取得、先見の明ですね。
髙橋製茶さんは、有機栽培をテーマにした映画「種まく旅人~みのりの茶~(2012年3月公開。陣内孝則・田中麗奈 主演)」のモデル及び舞台となったり、2013年には全国環境保全型農業推進コンクールで生産局長賞を受賞するなど、地域の農業を牽引する存在です。
上記でも触れた通り、臼杵市は「有機の里うすき」として、市全体が有機農業に力を入れており、オーガニック好きによく知られています。
そもそも、臼杵市の山側に位置する野津町(のつまち)にはたくさんの有機生産者がいます。
それを市が応援する形です。
有機栽培には有機の土が必要!という事で、「臼杵市土づくりセンター」を開設し、草木類と豚糞のみを原料とした「うすき夢堆肥」を製造したり、有機栽培で就農したい!という新規就農者の受け入れを数多く行ったり、農薬や化学肥料の使用を避け栽培された農作物を「ほんまもん農産物」として認証し市としてPRを行ったり・・・。
今、当社が生産系の事業で伺っているのが、この臼杵市のお茶。
地域に入れば入るほど、あちらこちらにご縁もできるし、これまで気付かなかった事も見える様になります。
僕の記憶細胞に情報が詰め込まれていく。。。これが思わぬ時にアウトプットするんですよね。
そうして地域間連携が始まったり。
日本の生産の現場、一人勝ちではなく、公開し、高め合う様になってきました。公開するほど、情報も人もお金も集まる。
「臼杵って、どんな町なんですか?」と最近よく聞かれます。
一言で言うと「日本らしい町」
海と山、両方があります。
海産物と農産物があり、城跡があり、城下町の風情が残っています。
発酵の町としても栄え、九州で最も大きな醸造メーカー、フンドーキンがある(臼杵人の自慢です)。
いくつもの映画の舞台にもなった風光明媚な街並み。
また、国宝の石仏があり、何やら古からのありがたい歴史もビシバシ感じる・・・
臼杵では近年、「臼杵焼」という陶磁器も復活しています。
あのキリシタン大名の「大友宗麟(おおともそうりん)」が築城した臼杵城を中心とし、この地域は形成されています。
その後、この地を支配した藩主「稲葉」氏の御用窯として、島原(長崎)、小石原(福岡)、小峰(宮崎)から職人を迎えて、磁器と陶器を焼いていましたが、もともとご隠居さまの趣味ではじまった窯は、たった10数年ほど栄えた後に衰退し、途絶えてしまいます。
その後、200年ほどの時を経た2015年、地元の陶芸家たちによって復活しました。
今では大人気の臼杵焼。あの星野リゾート「界・別府」で装飾品として使用されていたりします。
そんな臼杵焼の陶工達からも支持が高い、髙橋製茶さんの玉緑茶。
それは有機だけあって、ここの青空の様に、スカッ!と、清廉な味。
力強い野生的な茶葉の味わいもストレートに感じます。
(以前は釜炒り製のお茶もつくっていたそう。確かにこのエリアの近隣は釜炒り茶も多いですね。)
髙橋さん、玉緑茶の他に紅茶やギャバロン茶、白茶なども作っており、それはそれはチャレンジ精神旺盛。今後も更に茶種は増える予定とのこと。
もちろん、それも全て有機でやるのですから、そのバイタリティーは半端ない!
髙橋製茶がある臼杵市野津町は大分県のとんち王「吉四六さん」の出身地。だからここのお茶を「吉四六茶」と呼ぶんですね。
大分県内の小学生はこの吉四六さんのとんち話、学校で習います。郷土の有名人なんですね。
それがあってか、髙橋さんもとんち好き。とてもシャイですが、心優しく面白い!
そして、大分と言えば、やはり麦焼酎。ここ臼杵にも焼酎と日本酒の蔵元が点在しています。
そんな麦焼酎とこの有機の玉緑茶はとても相性が良くって。
「焼酎のお茶割りは酔わない」そんなわけないのですが、言葉のマジックは素敵に僕に響き、翌日、動けないぐらい大変な二日酔いになってしまった事も・・・
海と山、城下町や文化財、伝統的な陶磁器、お酒とお茶・・・
臼杵は、とても魅力的な要素がコンパクトにまとまっています。
年々、高齢化が進む農業地域ですが、この髙橋製茶には今でもシーズンになると、1,000軒近い近隣生産者から多くの生葉が持ち込まれます。
そんな地域の風物詩的な茶作りの環境も残していきたい、と髙橋さんは言います。
「生産が地域社会を形成している」、全国的に就農人口が減少し、食料自給率も低下し続けている今、実に頼もしく、理想的な姿です。
そんな髙橋製茶さんのお茶は、地元から愛され、市街の多くの飲食店さんで飲むことができます。
◆銘柄:吉四六茶(臼杵茶)大分県臼杵市
◆生産者名:髙橋製茶
◆住所:大分県臼杵市野津町大字八里合1407番地
◆HP:http://tkhs-cha.com/