嬉野茶は、「蒸し製の玉緑茶」が主流です。玉緑茶は、製法はほぼ煎茶と同じですが、精揉工程を行なわずに乾かすため、茶葉が、煎茶のような針のように細長い形でなく、勾玉(まがたま)状になることから「玉緑茶」と呼ばれています。
グリグリとした丸い形状から、グリ茶ともいいますが、過去に輸出向けに大量生産された経緯からグリーンティーが訛ったとする説、仏画や寺院で見られる雲の模様=屈輪(グリ)と形状が類似している事からとする説などがあります。
また、「玉緑茶」には、殺青方法の違いにより、「蒸し製」と「釜炒り製」があります。戦前までは全国的に、「釜炒り製玉緑茶」がほとんどでしたが、戦後は徐々に蒸し製に変わっていき、現在では玉緑茶生産量の約98%が「蒸し製玉緑茶」となっています。
この方は太田裕介さん。
茶園名は太田重喜製茶工場です。
茶園名ともなっている「重喜」さんは、裕介さんの祖父のお名前。
重喜さんご自身が、茶園を経営していく上で使用する農薬散布で農薬中毒を経験、農薬を使うことに疑問を持たれ、本当に作物や土が求めている肥料と、安全な木酢や砂糖・海藻エキス・各種ミネラル資材・有効微生物資材を使用しての病虫害の防除で、1978年に無農薬栽培へと移行させました。
今では、約3ha余りの全茶園で無農薬栽培をしています。
嬉野伝統の蒸製玉緑茶(グリ茶)を主に製造し、1988年より紅茶の製造も。
茶園は標高150mから500mほどの傾斜地の15ヶ所に分散、現在9品種を栽培しています。
太田重喜製茶工場で人気のお茶は、主力の「蒸し製玉緑茶」と「うれしの紅茶」。
もちろん、無農薬。
前述の通り、太田さんは、40年以上も農薬を使わないお茶作りをしています。
「やぶきた」はもちろん、「べにふうき」「さえみどり」「ふじかおり」他は自然な甘さで、奥行きのある香りは後口がさわやか。
またここでは、蒸し製の玉緑茶の他、釜炒り製の玉緑茶も作っています。 その品種に合った製法を選び製茶しています。
お茶全般に言えることですが、中でも紅茶は、その年の生育状況や発酵の過程で味が変わる魅惑の飲み物。
特に、“ウンカ”と呼ばれる虫が寄ってきた茶葉で作った和紅茶は、強烈な印象を残すほど華やかな香りです。 紅茶に関しては、地域の生産者達と協議会を作り、共に学び、製品のクオリティを上げる努力を続けています。
その他に、自園で育てたカモミールやミント、レモングラス、金木犀などを使った天然のフレーバーティーも製造されています。こちらも、もちろん、無農薬。
また、この地域は、伊万里や有田から続きポーセリンロード沿いであり、この嬉野地域には「吉田焼」という主に急須を磁器で作る窯元が多くあります。
吉田焼の代表的な柄は「ドット」。オーセンティックな可愛さがあります。
太田さんの玉緑茶や釜炒り茶を煎れるのに、ピッタリな急須。
裕介さんは、伝統と革新、懐かしさと新しさ、を常に念頭に置きながら、環境にも人体にも優しい農業を実践。嬉野の豊かな自然に育まれた、オリジナリティー溢れるお茶づくりをされています。
ここ嬉野地域には、2022年9月に開業する西九州新幹線「嬉野温泉駅」が新設予定。それに合わせて、グローバルなホテルが新築され、道路も整えられています。
新幹線開通で、たくさんのお客様がこの地域のお茶を飲んでくれれば、増える放棄茶園の課題解決に繋がるでしょう。期待したいですね。
◆銘柄:嬉野茶(佐賀県嬉野市)
◆生産者名:太田重喜製茶工場
◆住所:佐賀県嬉野市嬉野町大字岩屋川内甲938
◆HP:https://www.sagaryo.co.jp/