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2022.11.25 Update

【お茶の豆知識】 お正月には縁起のいい「大福茶」を飲もう

#お正月 #お茶の豆知識 #京都府 #六波羅蜜寺 #北野天満宮 #大福茶 #縁起


大福茶とは?

「大福茶」をご存知ですか?
「おおぶくちゃ」または「おおふくちゃ」と読みます。

「大福茶」とはお正月にいただく縁起のいいお茶のことで、「福茶」と呼ばれることも。
新年を祝うとともに、その年の無病息災を願って飲まれています。

京都を中心とした地域に平安時代から伝わる文化なので、関西圏の方には、「おせち」や「お雑煮」と同じような、お正月の風物詩的存在かと思いますが、地域によっては『あまり聞いたコトがない』という方もいらっしゃるかもしれません。

「大福茶」という名前には馴染みがなくとも、年末年始の近づく12月になると、赤や白や金などの福々しいパッケージに入ったお茶が、お茶屋さんや百貨店に並んでいるのを見たことのある方は多いのではないでしょうか?

福々しいパッケージが多い「大福茶」。
ご進物にもピッタリ。

大福茶の煎れ方

「大福茶」の煎れ方は簡単。

①その年初めて汲んだ水(若水といいます)でお湯を沸かし、急須でお茶を煎れる
②「梅干し」と「結び昆布」を入れた湯呑に、①のお茶を注ぐ

その年初めて汲んだ若水でお湯を沸かし、梅干と結び昆布を入れた湯呑に、急須で淹れたお茶を注ぎます。

◆補足:
・若水・・・「わかみず」と読みます。元旦の早朝に、その年初めて汲む水のことを意味し、
      体に取り込むことで、一年の邪気を払い、幸せを招くことができる、縁起の良い
      水とされています。
       かつては、朝一で井戸や小川に行き、餅や洗い米を供える、“めでたい唱え言”
      をしながら若水を汲む、若水を神棚にお供えする、若水でお茶やお雑煮をつく
      る、歯固めの餅を若水桶に落とし年占いをする、などなど、全国各地でそれぞれ
      の「若水汲み」が受け継がれていました。
       水道設備の整った今では、消えてしまった風習が多いですが、「若水は縁起が
      いい」という教えは地域や各家庭に受け継がれています。

・梅干し・・・その見た目より、『シワが寄るまで元気に過ごせるように』、また、梅の木の
       寿命が長いことから、古くから「長寿」の縁起を担ぐ食材とされています。

・昆布・・・「喜ぶ(よろこぶ)」や「養老昆布(よろこぶ)」のごろ合わせから、お祝いの
      意味や、長寿を願う意味を込めて食されます。また、結ぶことにより、「喜びを
      結びつける」「家族の結びつきをしっかりさせる」という意味が込められてお
      り、縁起のいい食材とされています。

・他にも・・・魔除けと子孫繁栄の意味を持つ縁起のいい木とされる「山椒」や、
       「まめまめしく働く」「まめに心を配って生活する」などの言葉から「元気」
       という意味を持つとされる「黒豆」など、地域によって「大福茶」に入れる
       食材が変わることもありますが、いずれも、「おせち料理」に入っている
       ような、縁起を担ぐ食材が使用されているようです。

「大福茶」には、
結び昆布と梅干しが入っていることが多い

大福茶の由来

平安時代中期(天暦5年・西暦951年)、都で疫病が流行り、多くの命が失われ、都は暗澹たる雰囲気に包まれました。医学が発達しておらず、病名すら付かない当時、疫病=死に直結するそれは恐ろしいものでした。

京都の六波羅蜜寺(ろくはらみつじ)の開祖であり、「南無阿弥陀仏」と唱える念仏を始めたと言われる、「空也上人(くうやしょうにん)」は、そんな多くの民が苦しむ状況に心を痛めます。

民のため、「空也上人」は、疫病退散を願って十一面観音菩薩像を彫り、その観音様を曳き車に乗せて都中をまわりました。その際、お茶に梅干を入れて、病気の人々に振る舞い、念仏を唱えたところ、多くの人が回復し疫病が鎮まったそうです。

(この時代、お茶は、僧侶や貴族階級など、いわば上流階級の限られた人しか口にすることのできない、とても貴重な飲みものでした。そんな貴重なお茶を、多くの民に振舞った「空也上人」。70歳で亡くなるまで、身分や思想に関係なく多くの人を救ったという「空也上人」のお人柄をよく表すエピソードでもあります)

時の村上天皇(946~967年)もこのお茶を飲まれ回復されたことから、元日になると六波羅蜜寺のお茶を飲まれるようになり、「天皇が飲まれるお茶」という意味の「皇服茶(おうぶくちゃ)」という名が付いたといわれています。

この習慣がやがて庶民にも広がり、「人々に幸福をもたらすお茶」という意味の「大福茶」という名前に変わって、後世に受け継がれているようです。

木造空也上人立像。口から吐き出している6体の阿弥陀像は「南無阿弥陀仏」を唱える様子を表現している

大福茶にちなんだ、六波羅蜜寺と北野天満宮の年中行事

ちなみに、六波羅蜜寺では正月の三が日に、元旦に汲んだ若水で茶を点て、小梅と昆布を入れた皇服茶(大福茶)が振舞われる、「皇服茶の授与」という行事が毎年行われています。

また、茶文化発祥の地とされ、梅の名所としても知られる北野天満宮でも、村上天皇の病気のご快復に由来する「大福梅(だいふくうめ)の授与」という行事が、正月準備を始める日とされる12月13日から行われています。北野天満宮で育てられ、日干しされた梅の実を、和紙の一種である奉書紙(ほうしょし)で包み、人々に授与します。この「大福梅」を元日に初茶として飲めば、心身の邪気が祓い浄められ、一年間を無病息災で過ごせると伝えられています。

北野天満宮の「大福梅」。12月13日の事初めから授与開始。無くなり次第、終了

来年のお正月にはぜひ、大福茶を

「大福茶」をご存知の方はもちろん、ご存知なかった方も、来年の元旦には是非、「大福茶」を煎れ飲んでみてください。

前述したように、ひと口に「大福茶」と言っても、結び昆布や梅干、山椒や黒豆を入れたり入れなかったり、お茶も、高級茶である玉露だったり、普段使いの煎茶だったり、玄米茶や粉茶が使用されたり、地域や各家庭、また取り扱うお茶屋さんや生産者さんによって、様々な形があります。

言い換えれば、形にとらわれることなく、自身と大切な人の健康と幸福を祈って、心新たに1年を始める節目を感じながら、お茶を煎れ飲む、ということが重要なのではないでしょうか。

また、「疫病退散」という意味を持つこの「大福茶」、コロナ禍の今にまさにフィットする!ということで、大切な方への贈り物にも喜ばれることでしょう。

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